2014年08月14日

2013.12月〜2014.3月決算の訂正分析

こんにちは。公認会計士の児玉です。

開示川柳

「総会で 訂正謝罪 トップ激怒!」

 ミスをしたことのない人間はいない。
また、そのミスが公開されることはない。

 でも、招集通知や決算短信や有価証券報告書などの法定開示書類に誤りがあれば、「訂正」という形でミスが開示される。そのミスが「数字」に関するものであれば、経理や監査法人の会計士の責任が問われるだろう。

 「訂正」が発生する原因が粉飾や不正による数値操作による場合は、社会的事件になるので極めてレアケースだ。

 訂正原因の99%は、監査の過程で数値が動くことによる「組替」「計算」「転記」「照合」のプロセスで発生している。

 会計においては「簿記論」、連結会計においては「連結財務諸表論」という作成理論が存在しているが
「どうしたら法定開示書類を正しく作成できるか?」という視点からの作成理論は存在していない。

 しかも、開示法令は毎年改正している。

 3つの法定開示書類の中で、定時株主総会へ議案として提示される招集通知の添付資料としての会社法開示書類(事業報告・計算書類・連結計算書類など)の訂正は特に大きな問題になる。

 もし、定時株主総会で招集通知の添付資料の計算書類の数値の不整合があったら、どうなるだろうか?

こんな発言をする株主がいても不思議ではない。

「議長(社長)!計算書類の○ページの○○の数値と○○の数値があってないじゃないか。
 監査法人(会計監査人)の監査報告書は適正じゃないですよね。
 適正じゃないんだから、報告議案(会社法439条)ではなく、
 決議議案(会社法438条2項)になるんじゃないですか。・・・」

(法的根拠)

(計算書類等の監査等)第436条

 監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含み、会計監査人設置会社を除く。)においては、前条第二項の計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書は、法務省令で定めるところにより、監査役の監査を受けなければならない。(規二)(規百十六 )(規百十七 )

2  会計監査人設置会社においては、次の各号に掲げるものは、法務省令で定めるところにより、当該各号に定める者の監査を受けなければならない。

一  前条第二項の計算書類及びその附属明細書
  監査役(委員会設置会社にあっては、監査委員会)及び会計監査人

二  前条第二項の事業報告及びその附属明細書
   監査役(委員会設置会社にあっては、監査委員会)
3  取締役会設置会社においては、前条第二項の計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書(第一項又は前項の規定の適用がある場合にあっては、第一項又は前項の監査を受けたもの)は、取締役会の承認を受けなければならない。

(計算書類等の株主への提供)会社法第437条

 取締役会設置会社においては、取締役は、定時株主総会の招集の通知に際して、法務省令で定めるところにより、株主に対し、前条第三項の承認を受けた計算書類及び事業報告(同条第一項又は第二項の規定の適用がある場合にあっては、監査報告又は会計監査報告を含む。)を提供しなければならない。
(規七十三 )(規百十六 )(規百十七 )(規百三十三 )


(計算書類等の定時株主総会への提出等)会社法第438条

 次の各号に掲げる株式会社においては、取締役は、当該各号に定める計算書類及び事業報告を定時株主総会に提出し、又は提供しなければならない。

一  第436条第1項に規定する監査役設置会社(取締役会設置会社を除く。)
   第436条第1項の監査を受けた計算書類及び事業報告
二  会計監査人設置会社(取締役会設置会社を除く。) 
   第436条第2項の監査を受けた計算書類及び事業報告
三  取締役会設置会社 
   第436条第3項の承認を受けた計算書類及び事業報告
四  前三号に掲げるもの以外の株式会社 第435条第2項の計算書類及び事業報告

2  前項の規定により提出され、又は提供された計算書類は、
  定時株主総会の承認を受けなければならない。

3  取締役は、第一項の規定により提出され、又は提供された事業報告の内容を
  定時株主総会に報告しなければならない。


(会計監査人設置会社の特則)会社法第439条

 会計監査人設置会社については、第436条第3項の承認を受けた計算書類が法令及び定款に従い株式会社の財産及び損益の状況を正しく表示しているものとして法務省令で定める要件に該当する場合には、前条第二項の規定は、適用しない。

この場合においては、取締役は、当該計算書類の内容を定時株主総会に報告しなければならない。(規百十六 )

いずれにしても、議長である社長は謝罪し、その場を治めることになるだろう。

でも、社長の経理、総務、監査法人に対する怒りは最高潮になってしまう。
 招集通知の訂正が原因で監査法人を切り替えるケースも少なくないという。

 経理の方や会計士がこんな不安をかかえながら、法定開示書類の修正・チェックに忙殺されるとしたら、あまりにも不毛だ。

 経理の方は、「作業」から解放され、もっと重要な「経営判断」に時間を振り向ける必要があるはずだ。
例えば、将来の経営戦略に係る中期経営計画や予算作成、海外子会社のマネジメントなどの役割について、将来の経営層になってゆくべきだと思う。

 そのためには、開示業務を属人業務ではなく、ローテ−ション可能な仕組みに変える必要がある。

 つまり、法定開示書類作成の「組替」「計算」「転記」「照合」を標準化する仕組み(内部統制の仕組み)をつくる必要があるはずだ。

 それでは、今回のテーマである訂正分析に入って行こう。

 すでに全文XBRLが始まっている2013年12月決算から2014年3月決算の訂正状況を株式会社スリー・シー・コンサルティング企画室の協力のもとまとめた。

以下のコメントは私見を含んでいます。
なお、会社名等は非表示とさせていただいております。

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1.訂正招集通知一覧 265社
  ・まとめ
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  ・明細
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 ・特徴・コメント
  (1)265社の会社の社長が定時株主総会で訂正の謝罪を行っていることを意味している。
  (2) 計算書類では、「関連当事者情報注記」「税効果注記」の誤りが多い。
  (3)事業報告では、「役員報酬含む会社役員の状況」「企業の経過及びその成果」の誤りが多い。
  (4)連結計算書類では、「金融商品に関する注記」の誤りが多い。
  (5)数値関係ではないが、参考書類では役員選任の誤りが多い。


2.訂正短信一覧   290社
  ・まとめ
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  ・明細
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  ・特徴・コメント
  (1)サマリー情報(表紙)では、「経営成績」「配当の状況」の誤りが多い。
  (2)連結財務諸表では、「連結キャッシュ・フロー計算書」の誤りが多い。
  (3)連結財務諸表では、「連結包括利益計算書」の誤りが異常に多い。
    「退職給付に係る調整額の削除」が特に多い。

   (例)
 1. 訂正理由
「退職給付に関する会計基準」の適用初年度において、「退職給付に係る調整累計額」を「その他の包括利益累計額」に直接計上する会計処理を「連結包括利益計算書」に含めて計算したものを訂正するものであります。なお、連結貸借対照表、連結損益計算書の変更はございません。

  (4)セグメント情報の注記等の誤りも多い。


3.訂正報告書一覧  285社
  ・まとめ
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  ・明細
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  ・特徴・コメント

 (1) 全文XBRL初年度で、HTML上は正しいがXBRLは間違っている部分は相当数あると予測していたが、どうして訂正報告書が全く出されていないのかの理由はわからない。ちなみに訂正短信ではXBRL誤りが散見されている。

 (2) 経理の状況では、下記の項目の誤りが多い。 
   ・デリバティブ関係注記
   ・関連当事者情報注記
   ・金融商品関係注記
   ・主な資産及び負債の内容
   ・退職給付関係注記
 (3)単体の簡素化に伴う影響もあったのかも知れない。
 (4)提出会社の状況においては、下記の項目の誤りが多い。
   ・コーポレートガバナンスの状況
   ・役員の状況
 (5)会社法関連では、「招集通知・定款等の添付漏れ」が
   意外と多い。


<開示業務における課題>

 定時株主総会の議案にかかわる招集通知の訂正は極めて重要な問題だ。
 上場会社の優秀な経理の方や総務の方が作成・チェックし、監査法人や監査役もチェックしているのに何故、数値等の誤りが生じるのだろうか?

 その大きな理由は会社法の開示書類(事業報告、計算書類、各附属明細書及び連結計算書類)の監査と「有価証券報告書」の監査の関係にあると認識している。

 決算の承認手続は、会社法で決められているので会社法監査は「数値の監査」であり、有価証券報告書に対する金融商品取引法監査は会社法の承認された数値を基礎として、(連結)財務諸表規則等の表示規則に基づいて正しく表示されているかの「表示の監査」である。

ところが、開示情報(注記など)・監査・スケジュールの関係は下記の通りになっている。

会社法の開示書類の注記・明細 << 有価証券報告書の経理の状況
(数値の監査対象)         (表示の監査)
4月中旬〜5月初監査         6月初め〜
5月末頃:招集通知発送

 一番範囲の広い有価証券報告書の表示監査が招集通知発送後に行われる。

 例えば、リース債務について、会社法監査では残高確認状で実在性を検証し、連結計算書類の連結貸借対照表の1年内リース債務・長期リース債務は正しいと結論づける。(4月後半〜5月初め)→会社法適法意見・取締役会承認5月末前に招集通知・添付書類(事業報告・計算書類・連結計算書類など)を株主に発送する。

 6月初めに有価証券報告書の金融商品取引法監査(監査法人監査)を受ける。
 有価証券報告書の経理の状況では連結附属明細表の借入金等明細表の記載箇所がある。長期リース債務の5年以内返済のものを「1年超2年以内」「2年超3年以内」「3年超4年以内」に区分して記載されている。

  監査法人は当然、リース契約書を詳細に監査してゆく訳だ。

 「あるリース物件のリース債務が1年超2年以内に10百万円記載されているが、リース契約書の返済予定表を見ると、すべて1年内でリース完済されることが判明する。

 連結貸借対照表の1年内リース債務が10百万円過小、長期リース債務が10百万円過大になっているので、監査法人は有価証券報告書の連結貸借対照表の修正を求める。経理は当該修正を行う。

 でも、上記の誤りは、会社法の連結計算書類の連結貸借対照表の1年内リース債務が10百万円過小、長期リース債務が10百万円過大になっていることを意味している。 当然修正しなければならない。
 
 でも、すでに招集通知は発送が終わってしまっている。

 これが「招集通知の訂正」となるのである。

 では、この問題にどう対応していったら良いのか?

 1番範囲の広い有価証券報告書の経理の状況の数値を4月の会社法監査で検証を終えておかなければならない。

 つまり、会社法開示書類、決算短信及び有価証券報告書の原稿をできるだけ早いタイミングで会社法監査時に監査法人に提出し、数値監査を終えておくことが重要になるだろう。

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posted by 児玉厚 at 11:43 | Comment(0) | 個別財務諸表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年08月01日

開示会計メルマガのリニューアル

 ご無沙汰しております。

 公認会計士の児玉です。

 開示会計メルマガは2012年1月から個人として
行ってきておりますが、その後停止となっておりました。

「新たな開示会計の分野をメルマガ読者と一緒に創る」
という理念を実践する為、またメルマガ読者へのサービス向上の観点より、
平成26年8月1日より、株式会社スリー・シー・コンサルティング
の全面支援を受け、開示演習問題、訂正報告等分析、開示演習講座及び
開示実務意見交換会などのサービス内容の向上を図って行きたいと
考えております。

また、財務報告検定の普及の支援も微力ながらさせていただきます。

引き続き、ご支援のほどよろしくお願いします。


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posted by 児玉厚 at 16:07 | Comment(0) | 連結財務諸表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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